トマト祭り参戦!2~奪えハム!からの続きです
広場もまたすごい熱気だった。ハム取りとはまたちがった熱気である。こちらでは、トマトを待ちきれない人々がシャツを水に浸しては投げ合っていた。
しかも、自分のシャツだけではなく、足りないのか、近くを通る男に集団で襲い掛かっては、その服を破き、自分の投げる材料にしている。まるで追いはぎだ。
おそろしい。
こんなとこにいては、せっかくのトマト祭りだから、トマトがあたった部分がわかりやすいようにと買った、白いポロシャツがなくなってしまう。
人ごみに紛れるように、首をすくめ身体を小さくし、目立たぬようこそこそと後ずさりを開始した。
とん。
その背中が、誰かにぶつかった。
ふりむくと、満面の笑顔の地元の方。
イヤーな、汗が額を伝った。
「GO!」
彼が私の身体を押した。
広場の真ん中へ躍り出る私。男達の目が一斉に集まる。ぎらつく視線が私のポロシャツにそそがれる。
あかん。
私は走って逃げ出した。
人ごみへ逃れようとする。
しかし、その肩へ、ポロシャツのすそへ手が伸びる。
「まてまてまて!ちょい待て!やめろ!」
暴れる私。
増える手。
そして。
びりっ。
なにかが崩れる決定的な音が響いた。ポロシャツが裂けていく。トマト祭りのためにせっかく買ったポロシャツが裂けていく。
トマトの赤が映えるようにと買った白いポロが。一度もトマトを浴びずに引き裂かれていく。
「ああああぁぁぁ・・・・・・」
完全に壊れたポロシャツが私の身体から離れていく。絶望に浸る私。
その顔面へ伸びるスポンジバット。
直撃。
思わず身体をすくめた私の背へ、スポンジバットの追撃が降り注ぐ。ぼっこんぼっこんである。
普通に結構痛い。なにされてんの、これ。
スポンジバットの雨が止み、思考を混乱させたままの私が顔を上げて見たものは、はるか彼方で飛ぶ私のポロシャツだった。
近くには、私のポロに止めを刺した男が満面の笑みで立っている。
感想を一つ変えよう。
この広場で行われていることを「まるで追いはぎだ」と私は先ほど思った。
しかし、それは正しくなかった。これは、正真正銘「ただの追いはぎ」である。
「祭りだから」
彼らはきっとそう言うのだろう。
ふーん、なるほど。
視界の端に、誰かが投げ捨てた布(元・服)が目に入った。
なるほど。
「しねや、ぼけぇぇぇ!!!」
私はそれを目の前の男の顔面へ思いっきり投げつけた。
1mと離れていない距離ではなったそれは、狙い違わず、男の顔面にヒット。
途端、スポンジバットの応酬にあったが、背中でそれを受けつつ、地面から別の布を拾い、それを再び投げつけた。
繰り返すこと数回。
唐突に男が突進してきた。
「NICE FIGHT!」
言葉と共に抱擁された。
戦い終わった男達の友情である。
胸毛がとても気持ち悪かった。
その後の握手だけでよかったと思う。
私はその場を去り、もう待ち時間が残りわずかとなったトマト祭り本番を待った。
しかし、彼らはまだまだ満足がいかないらしく、私が遠巻きに見る限り、服の追いはぎと投げあいはどんどんヒートアップしていっていた。
そして最終的に警察が介入し、一部の連中はトマト祭りを経験せず連行されていった。
すがすがしいくらいのアホである。
しばらくあきれている私の耳に爆竹の音を大きく、低くしたような大砲の音が届いた。
トマト祭り本番の開始だ。
<トマト祭り 4 へ続く>
次回→トマト祭り参戦!4~祭り本番。そして帰り道@スペイン・ブニョール_世界一周88
前回→トマト祭り参戦!2~奪えハム!@スペイン・ブニョール_世界一周旅行86
コメント
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大人の子供っぽさが、笑えます。素敵なまつりじゃないですか。でも、こどもはさんかしないんですよね、おしつぶされちゃいそうですね。ところで、一体どういうルートでうごいているのか、さっぱりわかりません。ルートマップ、南アメリカでとまっているよおおおお。
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>熊五郎の家さん
そういえば子供は見なかったです。
やっぱ危ないですし、参加しないんでしょうね。
あーー、更新してませんね。ちょっと諸事情と言うか、めんどくさ…げほんげほん。
…更新しときます笑