グアナファトは、美しい街である。
石畳の道路、コロニアル調のカラフルな家々、中世より残るランタン。街ごと世界遺産に認定されているのもうなずけるというものだ。
そして、そんな美しい街を見るのに、うってつけの場所、それがピピラの丘である。
メキシコの革命の立役者の一人であるピピラの像がある小高い丘。
ここは、ケーブルカーを利用しなければ上るのに多少の労力をようするが、それに見合う価値はある。
世界遺産の美しい町並みを一望できる。
しかし、問題が一つある。
ここは、虫が多いのである。
昼はまだしも、夜ともなると、その数は爆発的に増える。
夜のグアナファトは、昼のカラフルな町並みとはまた違う、ランタンの暖かな光の作り出す幻想的な光景で、個人的には昼よりもこちらをおすすめしたいのだが、前述したように、この時間帯は虫が多い。
「きゃー、すてきー。こんなきれいな光景、みたことない!」
とかのたまうくせに、その1分後にはむさくるしい男の横顔しか見ていない虫が。
「君のほうがきれいだよ」
とか戯言を抜かし、完全に町並みに背を向けて女を抱きしめる虫が。
もう、どこから沸いてきたのか、ってくらいわんさかと増える。
なんですか、あなた達は。わざわざ登ってきたんやろ?景色見ろ、景色。
けーしーき!
ちがう、横顔を見るな、目を見るな、キスをするな。
抱きしめあうな、ひそひそしゃべるな、こっちを見るな。
目が合ってしまったじゃないか。
そして、私のほうへ来るでかい虫。すまない、ここは公共の場だった、とか言うのだろう。
ごめん、なんか邪魔しちゃって。
「シャッター、押してくれないか。」
いやじゃぁぁーーーーー!!
じゃぁぁぁぁぁーーーーーーー!!
ぁぁぁぁーーーーーーーーーーー!!
「はい、チーズ」
シャッターがおり、デジカメの画面には幸せそうな二人の笑顔。
そしてそれを確認するのは、一人である私。
涙がこぼれそうだ。
悲しくなんかないはずなのに。
次回→捨てた旅の恥と学んだスペイン語@グアナファト_世界一周旅行12
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