※イスチグアラストとタランパヤ国立公園の画像集と行き方の記事はこちらです
→画像&行き方:イスチグアラスト・タランパヤ国立公園@アルゼンチン
バックパッカーはきたない。
そんなイメージを抱いている人も多いだろう。しかし、それは甘い。
一昔前のおしゃれにまったく気を使わないバックパッカーに関してはたしかに正しい。
しかし、今どきのバックパッカーには訪れた町で服を買い、化粧品をきちんと持ち歩きドライヤーで髪を乾かす。
おしゃれな人もいるのだ。
もちろん私も今時の若者としては服装に気を使わないわけにはいかないので、
キャップで寝癖を隠し、インナーにブラックのヒートテック2枚を着まわし、
さらにブラックのタンクトップとセーターを着まわし、ブラックのジャケットとパンツで締めている。
まっ黒。
こういうやつがいるからバックパッカーは汚いなどといわれるのだ。
「あなたの帽子、汚いわね。新しい帽子はどう?」
などとラ・リオハで町を散策していたら物売りのおばばにさえ言われたが、大きなお世話である。
私はこの帽子が気に入っているのだ。
ところどころ洗濯の失敗でピンクに脱色されたこの帽子のセンスがわからんとはだめなおばばだ。
その帽子、いくらだ?
「800円よ」
ここの物価からすると高い。わかってないおばばだ。
私はその場を後にしてタランパヤ国立公園行きのバスに乗り込んだ。
このバスで私は眠ることにした。タランパヤから夜行バスでの移動で少々疲れていたためだ。
帽子はかぶっていると邪魔なので外してひじかけに置いた。
手荷物は防犯のことを考え、両手で抱えた。
しかし、眠りたいという私の思惑に反し、このバスは多くの人が乗り降りし、騒がしかった。
おかげで私もたまに目を覚ましていたのだが、その度に私の隣の席もきれいな姉ちゃん、
先ほどのおばばにそっくりなおばばツー、私の帽子に似た帽子をかぶったおっさん、と入れ替わっていた。
そしてそのおっさんを見た次に目を覚ましたとき、バスはタランパヤ国立公園についていた。
この時すでに私以外のここで降車する人間はもう全員降りていたため、私はあせった。
バスに出発されてはたまらん、と急いで手荷物を抱える。
ついで、席を見て忘れ物がないことを確認してバスを駆け下り、預けていたバックパックを受け取った。
バスの運転手はその受け渡しが終わると、すぐにバスを出したがっていたので荷物を引きずって道の端へよけた。
寝起きでどたばた忙しい。
しかし、とにもかくにもタランパヤ国立公園に到着である。
寝癖を抑えるべく、手荷物の中にあるだろう帽子を探した。
だが、見つからない。
なぜだ。と考えていたら思い出したのだが、私は帽子を手荷物にいれていなかった。
ということは、席に忘れたか、とも思ったのだが、今回に限ってはそれはない。きちんと確認したのだ。
では、どこだ?と考えて思い当たった。
「私の帽子に似た帽子をかぶったおっさん」
あの帽子、俺のやん。
せっかくのお気に入りの帽子を盗まれてしまった。
脱色されて汚れがついてそろそろ捨てようか、と思っていた帽子を盗まれてしまった。
くそう、なんておっさんだ。なんて泥棒のセンスがないおっさんだ。
泥棒業界に上司がいたら絶対に説教されているぞ。
「なんでこの帽子を盗ったんだ」
「金になると思っているのか」
きっと、こんな感じだろう。あのおっさんはなんと返すのだろうか。
「あの日本人が使っていたときは輝いていたんです」
だろうか。
「彼の後光で光っていたようです」
ありえる。
私はタランパヤ国立公園の見学へ向かった。
垂直にそびえ立つ100mはあろうかという崖。
ごろごろと転がる家ほどの大きさの岩。
灼熱の大地。照りつける太陽。古代の地球、そのままの光景、気候にめまいがした。
こんな景色を見せてくれたアルゼンチンに言いたい。
「帽子かえせ」
なぜ私は容赦ない砂漠の日差しの中、何もかぶらず歩いているのだ。
途中から仕方がないのでジャケットのフードをかぶっていたが、
しかし後になって考えてみると、このときの私は、「全身黒ずくめでフードをかぶっている外国人」である。
怪しすぎる。
このままではまたどこかの検問でひっかかってしまう。
帽子ほしい。
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