くさった奴!国境越えと人の本性@カプルガナ→トゥルボ_世界一周33

陸の孤島であるコロンビア国境の町、カプルガナから脱出するために、一緒に国境を越えたアルゼンチン人と共に船に乗る。

この船は現地人の足にもなっているようで、旅行者と思しき人間以外にも、老若男女様々な人が乗っている。

空はあいにくの曇りだが、コロンビアは現在雨季なので仕方がない。

しかし、船の屋根にただのブルーシートが一枚張ってあるだけのこの船はなんとかしてほしい。上に張られたそのブルーシート以外、船には雨を遮るものがないので、雨が降ったらえらいことになりそうだ。

船頭にその旨を伝えるも、いつもどおりの「ノープロブレマ」で、あてにならない。

せめてもの対策として、巨大なポリ袋に荷物をすべて入れ、雨から守ることにした。

あとは天に祈るのみである。

私は船の席に乗り込み、両手を胸の前で合わせた。

まあ、神の存在をこれっぽちも信じていない私が祈ったところでたいした意味があるわけもなくきっちり天気は崩れた。盛大に崩れた。
大雨である。楽しみにしていた景色はほとんど見えない。

その雨を切り裂いて船は海上をぶっ飛ばす。
マシンガンのように雨しぶきが身体に突き刺さる。

すばらしくいたい。

たまらず私は持ってきた折り畳み傘を前方に突き出した。

風圧がすごく、傘を持つ手は疲れるが、痛さは軽減される。下を向き、私はひたすら耐えることにした。

時間を追うごとに雨はなお激しさを増す。ついには遠くはおろか、ごく近い位置の景色もほとんど見えないような土砂降りとなった。
屋根であるブルーシートが意味をなくす。溜まった雨水が染み出し、船の中に降り注ぐ。
傘は前方に差しているため上からの雨水はどうしようもない。

シャツからズボンから濡れていないところはもうどこにもない。舞い込む風が濡れた身体を冷やす。轟く雨音と船のエンジン音の中、幼い子供の泣き声が聞こえる。

大人でさえ苦しいこの状況、彼らにとってはなお辛いことだろう。

前髪を濡らした雨水が滴り落ちるのを眺めながら私はただ雨が止むことを願った。
しかし私の願いは届かない。雨は降り続ける。

 

指先はふやけ、身体は震える。

そのうち、ボートが止まった。船頭があたりを見回している。現地人もあたりを見回している。いやな感じだ。

「遭難だ」

アルゼンチン人が教えてくれた。

最悪だ。この豪雨の中、視界がきかず位置を見失ったらしい。

動くに動けなくなった船の上から船頭が救援連絡を飛ばす。船は川の流れのまま漂う。
子供の泣き声は聞こえなくなった。泣き疲れたようだ。

現地のおっさんがくれたビワをみんなで分け合った。甘味が震える身体に染み渡る。

どれくらい時間が経ったのか。それほど長くはなかったはずだが、体が疲れ、冷え切るには十分な時間の後、助けの船がやってきた。

屋根付で快適そうだ。しかし、残念ながら小さい。こちらの船の全員が乗り移ることはできなさそうだ。

現地の男達がすばやく動き出す。

きっともう限界に近いはずの女性と子供達を救援の船に移すのだろう。そう思い、降りしきる雨粒のなか、私は彼らの動きを見守った。

だが、彼らは信じられない行動にでた。

自分達だけ救援の船に乗り込み、座り込んだのだ。他の人々は完全に無視である。元々の船には女性と子供、老人、それに旅行者が残された。

ふざけるな、お前ら。さすがに子供は乗せろよ。

ほんとうにひさしぶりにきれた。そして幸いなことに思いを同じくする人はそれなりにいたらしい。

一人の男性が怒鳴った。

数人のくそ野郎を引き戻し、子供と老人はほぼ全員救援の船へ移る。女性も特別にきつそうな人は何人か移った。

まだ救援の船に自身の下種さを指摘されてもなお動かない何人か最低な男どもが残っているのは大変にいらついたが、とりあえずは状況は改善した。

救援の船が走りだす。その後を追い、私達の船も走りだす。

今回、思いがけず汚い人間の本性を見ることになった。

けれど、下種な人間だけでなかった。最初に怒鳴った彼も、そして船に残った女性達も、自分がきついはずなのに、他人のために怒っていた。がんばっていた。

あいかわらず雨はやまない。しかしそれでも私の心は少しだけ晴れやかになった。
遭難は終わった。

しばらくののち、私は対岸の町トゥルボに到着し、そこからバスに乗り込み、メデジンに向かった。

 

次回→この作品、好きです。コロンビアの芸術家ボテロ@ボゴタ_世界一周34
前回→パナマ・コロンビア国境越え@プエルト・オバルディア→カプルガナ_世界一周32

 

<交通情報>
カプルガナ→トゥルボ
船で55000COP(2700円)。一日一便。
旅行記にも書いたように、雨が降ると地獄。巨大なビニールは船着場で売っているが、5ドルもする。しか今回の豪雨の場合、結局雨がしみてきて荷物は濡れていた。パソコンなどはこのビニール以外にも防水対策をしたほうがよい。
トゥルボ→メデジン
夜行バスで70000COP(3000円弱)。
たぶん実際はもっと安いが、遭難でくたくただった私は、船着場にいた客引きにすべてやってもらったのでこの値段。
<メデジンの安宿/格安ホテル>
宿名:CASA KIWI
住所:Carrera36 No7-10
ドミトリ20000COP(1000円)。インターネットはWifiで無料。ホットシャワー、キッチン付。
また、バーとビリヤード台もある。夜はうるさい。
行きかた:バスターミナルからタクシーで13000COP(650円)。
メトロ利用(1550COP、70円くらい)だと、Poblado駅まで行き、そこから東へバス通りを上っていく。Carrera36との交差点(信号あり)で右折。そこから200mほど歩いた左側。わかりにくかったら、駅からはタクシー利用でもよいかもしれません。近いのでたいした額にはならないはずですので。

・メデジンの他の宿
宿名:BLACK SHEEP HOSTAL
住所:Transversal 5A No.45-133

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