村からエンジェルフォールまでは、ギアナ高地から流れ出るカナイマ川がつないでいる。
この川はタンニンのせいで褐色に色づいている川だ。その川をライフベストを装着し、ボートでさかのぼる。道中、ボートからはギアナ高地のテーブルマウンテン、テプイのうつくしいコントラストが見れる。
しかし、美しい景色に見とれていたのもつかの間、ボートは急流にさしかかる。跳ねるように進むボートと川がぶつかって生まれる水しぶきが私達を襲う。
やはりエンジェルフォールまでの道は険しい。なにせ、世界最後の秘境ギアナ高地の中にあるのだ。生半可なことではたどり着けない。
ガイドもその道一筋のベテランだ。彼はいう。
「ボートが壊れた。ちょっと待て」
生半可ではない。別のボートへ乗り換えることになった。少しでも揺るやかな流れを選びながらボートは川を蛇行しながら進む。しかしそれでも船は跳ねる。
船にはクッションなどという現代的なものはついていないため、私達は固い木の板へ直接座っている。
ケツが痛い。
私は与えられたライフベストをケツの下に敷いた。命を守るためのライフベストをケツを守るために使う。やっておいてなんだが、いざというときどうしようか。
それを見ていたツアーの同行者の一人が私に話しかけた。
「君はかしこい」
みんなでライフベストをケツの下に敷いた。エンジェルフォールまでの道は険しい。
カナイマ川を上りきった後は、ジャングルの中をトレッキングする。
それほど長い道のりではないが、湿気でぬかるんでおり、足場が悪いため、意外と厳しい。靴がぐちょぐちょである。
私達一行は、少しでも水の無い場所を選んで進む。ガイドはその横、水だらけの道を突っ切って進む。
なんでやねん、と思って彼の足元を見ると、彼は裸足であった。そういえば、彼は村からずっと裸足だ。
「道中には岩もあるのに、痛くないのか」と聞くと、「もう慣れたさ」との答え。その言葉の通り、彼は岩場でもすたすたと進んでいく。あっという間に見えなくなった。
さすがベテランガイド。
貫禄である。こら待て置いていくな。
しばらくすると、勾配が出てきた。そして進むにつれてだんだん勾配が急になっていく。
道も険しくなってくる。それにともない、強くなる湿り気。ジャングルの向こうに、流れ落ちる水の音が聞こえる。あと少しなのだろう。
ガイドは途中からは年配の女性を気づかい、最後尾を進んでいる。
先頭を歩く私は道らしきところをひたすら上へ、上へ、と登っていく。水の流れる音が次第に大きくなっていく。そこに階段のように組まれた岩の段が現れる。
滑りやすい岩を一歩ずつ踏みしめ登っていくと、大きな岩の上へたどり着いた。ジャングルの木々に覆われていた視界が開けた。
エンジェルフォールだ。
ここでもまだそれなりの距離があるはずなのに、でかい。
滝の途中には、雲がひっかかっている。豆粒のような鳥の群れが飛んでいく。水がゆっくりと落下していく。
水の速度が遅いわけではないのだろうが、滝が大きすぎてゆっくりに見える。
滝の落下で生まれる風が吹く。木々の葉が揺れる。
霧状の水滴が飛んでくる。あまりに高さがあるため、最後まで落下する前に霧状になったエンジェルフォールの水滴だ。
このあたりの自然は、風も、水もエンジェルフォールによって作り出されていた。でかい。遠近感の麻痺と共に、なんとも言えない感覚がこみ上げてくる。
風が強いため、岩の上に座り込み、エンジェルフォールを見上げる。
そうして、ガイドに帰ることを伝えられるまで私はあほみたいにエンジェルフォールを見上げ続けた。
■エンジェルフォール・動画
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次回→ベネズエラのバス旅とワイロと検問@シウダーボリバル_世界一周41
前回→エンジェルフォールツアー1_サポの滝@カナイマ_世界一周39
コメント
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エンジェルフォール、さすがです。写真もよかったですが、動画もよかったです。蒸し暑い日本に一服の涼を届けてくれました。いいなあああああ
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>熊五郎の家さん
よかったですよーーー。今はくそ暑いところにいるので、あのころに戻りたいです笑