ボリビアのローカルバス旅@ポトシ→ウユニ_世界一周旅行66

旅行記
$かもねぎ世界一周。~地球をぐるりと飲み歩き~

ボリビアのバスは安い。南米では1,2を争い物価の高いアルゼンチンから入国した私には特にそう感じられる。

ボリビアとアルゼンチンの2国では同じ距離のバス移動で4~6倍の差が出るのだ。
世界一周にしては時間がなく、移動を多く強いられる私にとって、この安さは大変ありがたい

だが、当然ながらいいことばかりではない。
ボリビアのバスはアルゼンチンのものに比べると、質がぐんと落ちるのだ。

トイレが付いているとうたっていても、実際にはついていないなんてことは当たり前であるし、
席は狭く、クッション性など皆無の固いものが大半だ。

そのため、多くの観光客はたとえ少し多めにお金を払うことになっても、まともなバスに乗って移動する。

しかし、私には金がない。

だからボリビアの地元民に混ざってウユニ行きの一番安いローカルバスに乗ることにした。
説明によると、エアコン、テレビ、トイレ付、セミカマ(座席が普通の席よりも大きく倒れ、半分ベッドのようになる席のこと)のバスだ。しかしどうせそのうちいくつかは壊れているだろう。
私は半ば諦め、バスに乗り込んだ。

バスの中は狭かった。もちろん、バス自体がせまいということもそうなのだが、
乗客の乗車率が高く、さらにみな、なぜか大きい荷物を持って乗り込むため、より狭くなるのだ。

なぜただでさえ狭い空間をさらに狭くしようとするのか、まったく理解に苦しむ。

私は大きい荷物はバスの荷物室に預けているので、四苦八苦している地元民を尻目に
自分の席にすばやく移動し、眠ることにした。
つらい移動の間は寝ているのが一番である。席を傾けるレバーに力を込める。

しかしここで、計算違いが起こる。

席が倒れない。レバーをいくら引いても席が倒れない。故障である。
多少の故障は覚悟していたが、これはちょっといたい。ひじょうに眠りづらい。

しかし、文句を言ってもここはボリビア、なんともならない。
我慢して私はそのままの体勢で時間をすごすことにした。

テレビでも見ていれば気も紛れるだろう。
南米のバステレビはかなり優秀なのである。

スペイン語なので会話はいまいちわからないのだが、有名な映画を放映してくれることが多々あるのだ。
アルゼンチンではMR.&MRS.SMITHや、キルビルなどが放映されていて、
窓の外に見るものもなくなる夜などは大いに時間を潰すのに活用させてもらった。

テレビを見るべく視線をバスの前方へとやると、地元民がまだ荷物を詰め込もうとがんばっている。
いい加減にあきらめて預ければいいのに、と思うのだが、彼らには彼らなりのこだわりがあるのだろう。

こちらは視界が少し狭まるだけなので別にかまわない。
しかし、目の前のおばはんの荷物はいただけない。

テレビのあるだろう場所が見えん。
どけ、荷物どかせ、テレビが見えないとおばはんに身振り手振りで伝えると、
彼女は一つ首肯して荷物の位置をずらしてくれた。いいおばはんだ。

しかし、そこからがいただけない。

テレビがない。テレビのあるべき場所には四角い箱があるだけで、何もない。
私はうなだれた。おばはんに、「荷物戻していいよ」とだけ伝え
音楽プレーヤーを耳にやり、外をボーっと見つめた。

これでリクライニング機能ダメ、テレビダメ。2バツ、と。

そして夜になり、冷え込んできて小便がしたくなった私はトイレに立った。
もうおわかりだろう。トイレには取っ手がなかった。開かなかった。使えなかった。

3バツである。

席は倒れず眠れないし、テレビはなく暇は潰せないし、トイレには行けない。そのうえ寒い。
憤慨した私は共に乗りこんでいるバス会社の人間に「せめてエアコンをつけろ」といった。

すると、やれやれ、といった表情で彼は毛布を取り出し、私に渡した。どうやらこれがエアコンのようである。
これでパーフェクト。すばらしい。

なーにもない。なーんにもないっ。ふざけている。

疲れ果てて私はねむった。
もちろん席は倒れないので90度の体勢が保たれている。健康によさそうだ。すばらしい。

しかし、そんな眠りすらも、深夜崩される。
周囲が何か騒がしくなった、とおもったら、カラフルな衣装に身を包んだインディヘナの
おばはん軍団が乗り込んできたのだ。

しかも、安い金額しか払っていないらしい彼女達は席がなく、通路に座り込み始める。
そして横になって寝始める。

私が新手の拷問のような体勢で耐えているというのに、はるかに安い金額しか払っていないであろう彼女達のほうがよっぽど快適そうだ。
安い金額で快適さを手に入れている。なんと賢い女性達であろうか。

ふんだろか。

眠るおばばを見つめ、殺意の中私は目を閉じた。
そして数刻もしないうちに目を開いた。原因は足に宿る違和感である。
正確にはふとももに宿るほんのりと暖かい感触と重みである。

疑問に思って開いた私の視界におばばの頭があった。

おわかりだろうか。

ひざまくらしているのである。おばばをひざまくらしているのである。

なぜ私はお金を払って、エアコンもなく、テレビもなく、トイレもなく、
リクライニングもしない席に耐えて、おばばをひざまくらをしているのだ。

彼女はすやすやと幸せそうな顔で眠っている。

ふざけている。

 

 

次回→世界一の絶景?憧れのウユニ塩湖をジープで観光@ウユニ_世界一周旅行記67
前回→過酷過ぎる労働と鉱夫のやさしさ@ポトシ_世界一周旅行65

 

コメント

  1. アッキー より:

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    おばばはあなたのおかげで心地よい眠りにつけたでしょう。笑
    貴重な体験しましたね☆

  2. ねぎ より:

    SECRET: 0
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    >アッキーさん
    私はつらかったです。こんな体験したくなかった・・・泣

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