ハー…・・・ハー・・・・・・ハー・・・・・・
私は荒い息をはいた。目の前には女性がいる。私より少し年上に見える女性が居る。
目鼻立ちははっきりしており、髪の色は金色だ。
彼女は英語を喋っている。私に対して喋っている。
私の額にじっとりと汗が浮かぶ。
ハァー…・・・ハァー・・・・・・ハァー・・・・・・
彼女の言葉が終わる。荒い息を整えつつ私は思った。
あっつい。
山へ向かうための装備でストーブの点いている部屋に居続けるのは無理があった。
私はジャケットを脱ぎ、マフラーをはずした。それから彼女に話しかけた。
「つまり、フィッツロイのふもとの湖も雪と氷が無ければいけるんですね」
「ええ、そうよ」
私はさらに「いま、雪はあるか」と聞いた。それに対して彼女、インフォーメーションセンターの女性は答える。
「わからないわ。行ってみて確認して」
そんなわけで私はフィッツロイという山のふもとまでのトレッキング情報を入手したのである。
「ついにネギが犯罪を犯したのか」
とか思った方はぜひあやまってほしい。
インフォーメーションセンターを出て町の中央の道を突っ切り、山へ踏み入る。
さすがに南緯49度の位置にあるだけあって顔に当たる風は少し冷たい。
しかし、きっちり整えた装備のおかげで、その他の部分は寒くない。
上半身に6枚、下半身に3枚、靴下3枚、マフラー二つ、手袋、それに旅の間ずっと履いているトレッキングシューズ。
これだけあれば寒がりの私でも快適である。できればフィッツ・ロイのふもとまで行きたいものだ。
さく、さくと音を立てながら歩みを進める。目の前には雄大な景色が広がる。きれいだ。
しかし、なぜか少しものさびしい景色だ。こんな景色を見ていると悩んでいたあの女性の言葉を思い出す。
「わからないわ」
あの時あの場所で彼女はなぜこう答えたのだろうか。私にはわからない。
「雪はありますか」
「わからないわ」
足元からはさく、さくと音が聞こえる。私にはわからない。
この一面の銀世界の山でなぜ「雪があるかわからない」のかわからない。
雪しかないやんけ。
わかれ。
次回→無謀?真冬のパタゴニア、フィッツロイ登山2@エル・チャルテン_世界一周旅行56
前回→うらやましい。アルゼンチンのシエスタ@エル・チャルテン_世界一周旅行54
コメント
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いつも笑いながら読んでいます。
初めましてYUROと申します。京教の息子であります。
ようやくコメントすることが出来ました(ただサボっとっただけですすみません)
この記事を読んで、フィンランドの港で真冬に外に放り出され、-20℃の中野宿させられたのを思い出しました(笑)死ぬかと思いました。
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>YUROさん
-20℃ですか!!よく死なんかったですね。。。僕のとこの寒さはまだましってことですね。下見て暮らして耐えしのぐことにします笑
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すごーい!!
南米の寒いところを冬に行って、雪の中のトレッキング☆そこでしか見れないものをたくさん見れたのではないでしょうか。
やっぱり雪山の景色は素晴らしいですね(o^∇^o)ノ
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>アッキーさん
すばらしかったです!しかし、寒かった…笑